設計理念
1. 職能=profession
建築家の職能とは建築に関する法律、計画、構造、設備、防災、施工、積算、予算折衝、施工監理など、それぞれの専門性に通じ、知識を駆使し建築を創造することに従事することであります。つまり、単なるexpartとして専門技能を用いることにとどまらず、建築家が自分自身の仕事に心血を注ぎ、精神の内的欲求を満たされているならば、建築家としてprofessionalであると言えます。我々は、常に建築家としてなすべき事を考え、実践してゆく集団であり続けます。
2. 専門性について
建築設計における専門性とは、建築を創る過程における基本原理に基づき派生するものであります。基本原理とは建築家ウィトルウィウスの「建築十書」による「用」「強」「美」の3要素に、現代建築において必須である快適性として「快」を加えた4つの要素を我々の基本原理と定義します。現在我々は、それぞれの要素に対応する設計思想として、以下の専門的概念を用い建築を計画しています。
「用」:機能性、平面計画・・・コンパクト、ロスレス
「強」:構造計画、工法 ・・・スケルトン、ハイサッシ
「美」:デザイン、歴史 ・・・幻想的空間、カフェスタイル
「快」:エコ、省エネ ・・・緑化、断熱、電化
3. 災害から知ること
現在の日本は、史上最大の災害に襲われ、深く大きなダメージを受けています。100年に1度といわれる世界経済の危機を乗り越えなければならない、今まさにこのタイミングで訪れた災難に対し、日本人は辛抱強く耐え、連帯し立ち向かおうとする姿勢は世界から驚異的な行動として注目されています。この、日本人のいわゆるJapanism=日本人的特質は、日本の伝統建築のあり方に深く繋がりがあるのではないでしょうか。世界的視点から見ると、日本は地震大国であり火山活動も各地であり、急峻な山河による水害、台風被害など自然の猛威を、我々日本人は歴史的に受け続けているといえます。日本の家屋はその自然環境に耐え我々の生活を守るために、現在に至るまで発達してきました。災害のつど、構造や設備のスペックを改めより安全な建築や街を目指してきました。我々も災害に学び、安全で安心な人間の生活を守ることの出来る建築とするために以下のルールに則った設計を原則とします。
- 洪水、土砂災害などを考慮し、1階に寝室を置くことを避ける
- 鉄筋コンクリート、耐火構造を基本とする
- 非常用発電装置は居住者の保安と食品の冷凍冷蔵の確保を配慮する
- 災害避難場所としての使用を前提に計画する
- 棟を分けるなど、延焼時間を稼ぐ計画とする
- 全周を避難に有効なバルコニーとする
4. 高齢社会について
日本は、世界に類を見ない高齢社会を迎え、生活の基盤が揺らいでいます。人類史上初めての長寿社会において、持続可能な社会の形成のために、豊かな生活基盤を構築し、進化させなくてはなりません。そのためには地域住民が安全・安心に暮らせる社会を築く拠点として、行政・事業者・住民による協力社会をつくり、地域ネットワークの強化を図る必要があると考えます。地域福祉の観点から、高齢者だけでなく、育児や子育て環境の支援など様々な相談対応を可能にし、自治会、民生委員、ボランティアによる高齢者の見守りや訪問などおこない、相談者の生活を支え、住み慣れた環境で生活が出来る体制つくりが必要であると考えます。